あなたに (嶋本と高嶺)
きらきらと眩しいイルミネーションをくぐりぬけて、その先の新年をも見据えたような品ぞろえを視界の端に、赤と緑と白色で彩られた目に痛い配色とすれ違いながらたどりついた玄関で外の寒さと、それから単純に囃したてられた世間の風潮に対する若干の文句も込めた呟きを一つ落として、浮足立つ世間から一枚裏側に入ったようないつも通りの食卓へ向かう。
あたたかいずなのにひんやりと感じるその場の空気に、その原因が自分の緊張だと知っていても焦りが募る。おかえりなさいと迎えられて、それに自分はどうやって返しただろう。
心を躍らせながら眠って、起きた次の日の枕元を楽しみにするような歳でもないし、なによりも相手が相手だ、そんな風に柄にもなくはしゃぎ合える人間ではなくて、結局やはり自分だけが空回ってしまっている気がして、それから自分がいつものように振る舞えていた自信と記憶が一切ない。
それに気づいたのがもう暇を告げようかという時間帯で、こう言う日にプレゼントなんて大したものではないけれど一大決心とともに相手に渡そうと考えついたものを渡すにはどのタイミングが一番いいのだろう――なんて考えていたはずなのにその予行演習は全部台無しになって、台無しになったのが判ったからもう半ば自棄のように小さな小さなそれでも精一杯の自分の気持ちと勇気を振り絞ったその包みを取り出して、そこまでで使い切られてしまった勇気はしぼんでどこかへ行ってしまったからなんだかぶっきらぼうだけれどそれがきっといつもの自分の照れ隠しだった気がして、ん、とそれを差し出した時はいやに平静だった。
どうかその小さな包みにこの心の震えが伝わりませんように、と柄にもなく誰かに頼った自分の願いはきっと聞き届けられたのだろう。
それじゃぁ、なんて別れを告げて寒空の下へ出てからようやく、してやったりと笑える自分に気がついた。
あなたに、 (嶋本と高嶺)
なんだか気恥しいから開ける時は一人の時にしてくれなんて断りつきで渡されたその小さな包みをどうしようか暫し迷って、じゃあそうしますとありがたく頂いておいてから言われたとおり次の日に一人になってからそっとその包装紙を破れば中から出てきたのは簡素な箱にこれでもかと気遣いのように詰められた緩衝材とその中に息苦しそうに埋まっていた小さな銀色の輝きだった。
どこかで見たような複雑な形のそれが何かを理解するまでには一瞬もかからない。
次の瞬間から思いのはこれを調達してからずっと隠し持っていたその人の心情や緊張や一大決心やそういった全部自分に向けられた気持のことばかりで、自分はとても幸せなのは十分承知の上でありがたく思っているのにどこか心の片隅にもっと、なんて思う自分がいることも確かに判ったのだけれど今はそれすら全部愛しくて、この気持ちをどうやって伝えたらいいのか考える暇すら惜しく思うほど何か急かすような気持ちに急かされて、緩んだ口元を元に戻す時間なんて考慮しないまま支度を整えて外へ出て、寒空の下でその人に電話をする。
クリスマスと言うことで一つ、ほのぼのとしたものを。
嶋さんなりの精一杯の合鍵の渡し方を模索したらこうなりました、というお話。
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