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かわいいひと (嶋本と高嶺)

近くでお祭りがあるんです、とすれ違う挨拶の別れ際に教えてくれた嬉しそうな顔のヒヨコを見送って、魁一と遊んでくるなんて曖昧な行き先を告げて出て行ったあの小柄な背中を思い出した。
(………あ、)
思い立って携帯から、常に備えてあるだろうその人へ電話をかける。少しだけいつもより長い呼び出し音のあとに、特有の喧騒を背景にその人は電話をとった。
「どないした、高嶺」
いつでも変わらない若干の緊張を含んだ声に、楽しい気分に水を差したかと全く平穏に思えるのはおそらく幸せなことで、だからそれへの謝罪を込めて言ってやる。
「魁一君のために張り切るのは良いですが、生き物は飼えませんからね」
沈黙のあとに聞こえたおま、と何か言いたげな声はそっと耳の奥に残して優しく通話を終わらせる。一体、今どんな顔で携帯を見つめているかが判ってしまって、 小さく笑いを外にこぼした。




ひんやりと冷たいもの (嶋本と高嶺)

子供が出歩くには遅い時間に、全力を傾けてきましたと言う疲労感を伴ってその人は現れた。お前なんやねんあの電話、からはじまる特に気にしていない事への小言をこぼしながら、その人は生き物は持って帰っていないことを二回分主張した。
まだ気分は高揚したままなのか、いくらか早口であちらこちら何やかにやと報告を背中に投げてよこす。
「ああ、そういやな、」
と中途半端に途切れた言葉に振り向こうと体を動かせば、そちらを向ききる前に首筋に冷たさと小さな衝撃が走る。
半歩分の距離から投げられたそれはびよん、と奇妙な音を立てながらその人の手のひらに帰っていった。
「生き物やないから、ええやろ」
何故かしてやったりと微笑むその人は、びよんびよんと水風船を弄ぶ。言葉の端々、行動の欠片から滲む祭の余韻にあてられたのか、なんとなく懐かしさが先に立って仕方のない人ですねと笑うにとどめた。




ゆったりとひたる (嶋本と高嶺)

みやげ、と舌足らずに差し出された、手に持つそれとは別の水風船は少しだけ投げられるようにして手のひらに収まった。ちゃぷん、と中で揺れるただの水にどこか自分の奥の方がさわさわと波を立てて、なだかそれが妙にくすぐったかった。
子供みたいだ、と飽きもせず水風船で遊ぶその人を評せば、促すように小さな輪を中指にはめてくれたから、少しだけ感覚を探るように二、三回手から放してはまた引き上げるを繰り返す。
大の大人がきちんとソファに腰掛けながら水風船で遊ぶ図は、端から見れば相当おかしかったと思い返す時がそれほど遠くなく来るのだろうなと判ってはいたけれど、そんな風に思ったとしても嫌な気分になるものではないから、もう少しだけ隣に座る彼の滲ませる余韻にあてられていようと思う。懐かしいのはきっとお互い様なのだ。




Blinking child hand. (嶋本と高嶺)

「…へぇ」
「何ですか」
「いや、手ぇ振ったるんかと思って」
「可愛いじゃないですか」
「お前が?」
「子供が、です」
「判ったって冗談やろ、睨むな」
「冗談の程度を考えてください」
「あ〜……、なんで子供て電車に手ぇ振るんかな」
「なんででしょうね……手を振ることを覚えたてなんじゃないですか?その年代って」
「あれか、お前手ぇ振った方か」
「沖縄に鉄道は走ってませんから」
「……せやっけ」
「モノレールです」
「似たようなもんやろ……」
「昔はバスでした」
「お前……な…」
「――ああ、別にはぐらかしてるんじゃないですよ」
「せやったらなんやねん」
「何ででしょうね」
「………」
「はいはい、わかりましたから睨まないで下さい、降りますよ」




Disregarded the rule. (嶋本と高嶺)

「そういうあなたはどうなんですか」
「あ?何がや」
「手、振ったんですか」
「お前…やらしいな……」
「人にこれだけ喋らせておいて……あと、言いますか?」
「あーあーあーわかったわかった言わんでええわ、あーもーほんっとお前」
「なんですか?」
「いや、何でもないわ。よっしゃ、耳の穴かっぽじってよぉ聞けよ、今夜は寝かさへんぞ」



小話帖の下方にてひそやかに数を数えるカウンタ506番を踏まれたyokuさんのリクエスト、 「嶋嶺と自分達の小さい頃のお話」を書かせていただきました。ありがとうございます!

子供のころ→懐かしい思い出→はしゃぐ大人→縁日?という曲解の果てに生まれました。
ホームで列車に手を振る子供がかわいすぎたので昔やってればいいのに!という妄想から生みました。そうしたら沖縄には鉄道が走っていませんでした。
とにもかくにも楽しく綴ることができて幸せいっぱいです!ありがとうございました!

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