さむいふゆ (高嶺)
冬はあなたのため息がよく見えますねといつかの昔に言ったら、それ以来二人並んで歩くときにため息を吐かなくなったあの人を自分の白いため息の向こうに思い出す。
ふゆのさむさ (嶋本)
いつだったか冬の寒さに任せて盛大にため息を吐いてから、そう言えばもう冬はあなたのため息がよく見えるなんて言ういけ好かないあいつは隣にいないのだと気付く。
愛と純情と拳 (嶋本と高嶺)
全くあなたは昔から何かと手が早いですねと笑って言うから、最近の自分の拳にはちゃんと愛情と気遣いがこもっていますと返したら、珍しく素直にそれもそうですねなんて返ってきたからきっと明日は忙しいのだと思って流すことにした。
せつな、 (嶋本)
なんだか久しぶりにその姿を見たような気がして、なんだかその姿がやけに疲れていたから、ほんの、本当の一瞬だけ、心臓の底が抜けてすとんと足下が落ちる感覚に襲われた。
器用貧乏 (嶋本と高嶺)
昔は少し不器用で、褒められるとその枠組みのようなところから踏み外してはいけない気がしてだんだんと息苦しくなっていくこともままあったのだけれど、なんの衒いもなく自分を褒めて貶して評価して見放して、ずいぶん自由な人だと思った気がする。
どれもこれも放つ言葉は純粋で、心の底からそう思っていて、その言葉を受けきれない自分は器用か不器用かといえばたぶん後者だったけれど、そんな風に純粋な言葉しか放てないこの人も随分と不器用だと思った。
ため息にまつわる小話に入りきらなかった二つとそのほかの三つ。
BACK