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本日は晴天なり (嶋本と高嶺)

「いい天気ですね」
「せやな」
「そろそろ干しますか」
「誰をや」
「せめて何をって訊いてください。布団ですよ、仮眠室の」
「ああ、そういやそろそろ、ファブリーズ時やな」
「いえ、天日干しですよ」
「なんや、外か」
「そう言ってるじゃないですか。ご一緒にどうです、隊長」
「あ?何がやねん」
「こんな天気の良い日に頭の中をぐるぐるさせておくのはもったいないですよ」
そう言ってにこやかに笑うそいつの顔は今の自分に大層な憎しみの念を覚えさせる。




とってくわれる (嶋本と高嶺)

「あかん、やられた」
「何がですか」
「虫や、蚊に食われた」
「ああ、首のところ、赤いと思ったら」
「あかん、気いついたら気になってしゃあない」
「掻いたらよくありませんよ」
「判ってんねんな、それを我慢でけへんのが人の性や」
「誰でしたっけ、誰かが言ってましたけど」
「なんや」
「虫さされを気にしない方法ですよ」
「お、なんや救命士」
「確か絆創膏を貼るんだとか」
「あ〜確かに気にならんかも」
「貼ってしばらくは気になるだろうけど」
「それええな、誰や、言ったの」
「確か小鉄が」
「あとで何か言っといたろ、おし、高嶺、絆創膏くれ」




こわごわうしろをふりかえる (嶋本と高嶺)

「…なぁ、高嶺」
「なんです」
「やっぱりな、俗説ってあるやろ」
「ありますね」
「世間体、ちゅうのも」
「ありますね」
「それらを鑑みると、やっぱりあかんと思わへんか」
「若干、思いました」
「よっしゃ、ええ度胸や右で勘弁したる」




理不尽な害をこうむる (嶋本)

「で、高嶺」
「なんですか」
「言ったのは誰やった」
「確か小て」
「せやったら、あいつは左やな」
「が、大口から聞いた、と」
「ほんなら二人まとめてやな。不公平やから神林もや」
「それはどうかと」
「うっさい、左も張られたいんか」




ある晴れた日のこと (嶋本と高嶺)

新聞から顔をあげて、おう、おかえり、と自分を迎えたその人は、珍しいことに眼鏡をかけていた。
「どうしたんですか、それ」
「んー?ああ、昨日の宴会のなんかの景品でもろたんや。伊達や、伊達」
もとは鼻眼鏡やったんやけど、鼻とヒゲとれてしまいよった。
そういって器用に眼鏡をもてあそぶ。確かによく見てみれば、それは随分安っぽい造りだ。
荷物を片付けて隣に腰を下ろせば、ふと思いついたように眼鏡をかけてこちらを見る。
「どう、どない?」
何かしらの感想を求める、声と表情。少し考えた末に、無難なところで返した。
「そうですね、初めて見ますから、新鮮です」
「なんや無難なとこ返してきよって。格好ええです、とか少しは気の利いた事いうてみんか」
見抜かれている。
まぁ、あれだけ時間をかけた返答のわりに、なんの捻りもなければ大体は判るだろう。
それに、素直な感想をいったところで、どうせ報われるような反応は返ってこないのだ。
「じゃぁ、格好良いですよ、嶋」
「じゃぁ、てなんやねん、じゃぁ、て」
くそ、つまらん、と外してしまったそれを見て、ああ、そういえば、となにかに気づいたような顔で、意地悪そうに笑う。
「お前の眼鏡も見たことないな」
「ええ、視力は問題ないですからね」
「ちょ、かけてみ」
やはりそうくるだろう。大体会話の流れの予想はできる。
「嫌ですよ、ちょっと、やめてください」
「ええやん、どうせ伊達や、かけたところで視力さして変わらんて」
減るもんじゃなしに、といういいがかりにまだ酔ってるんですか、と返したところで、互いの力に抵抗しあうどちらかの手の中で、何とも呆気ない音がした。


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天気のいい日はイコールで明るい話、という自分方程式に基づいて編んだ小話。
首筋の絆創膏は深読み厳禁、そして眼鏡。
結果としては吉野の趣味を最大限に詰め込んだ嶋嶺小話でした。

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