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メビウスのように (嶋本と高嶺)

「例えば、ですよ」
お互いに同じ事について悩んでいる時、大抵は救命士が解決策を切り出す。
「チョコレートがあったとしましょう、板チョコです。それを毎日必ず半分残すようにして食べ始めます。食べ終わるのは、何日後になると思います?」
それは永遠をはじめる、ひどく簡単で唯一の方法。
「つまりそれは、あれか」
その向こう側に潜むものと、自分たちの今の状況をかんがみるに、これは多分、
「ここに一つだけ残った饅頭、賞味期限もとうに切れてやばそうやけど、どないするんですか、隊長て言いたいんか。ついでにあれやろ、食べるなら半分こっちゅう」
「まぁ、大まかには」
「阿呆、半分半分で食べてっても、目に見えんようになったらないのとほとんど同じや。屁理屈は人様にそこまで求めん」
それもそうですね、と何もなかったように言うから、意地悪のつもりで救命士としての意見を仰ぐ。
「お前はどう見てるんや、救命士」
そうですね、と考えた風もなく、条件反射のように、あっさりと。
「食べて終わりにしましょう」




雨の日 (嶋本と高嶺)

この世にはインターフォンという便利なものがあるんですよ。あなたの部屋にもついています。もちろん、この部屋にも。だからそんなに、近所迷惑ですから扉なんて叩かないで素直に押してください、自分は中にちゃんといます。
「傘、どうしたの」
「俺が出た時は晴れてたんや。ちゅーかタオル貸せ、もうあかん」
「天気予報、聞いてたと思ったけど」
「急に降られてここが一番近かったんや」
おや、いつの間に訊かれもしない言い訳を自分から口に出すようになりましたか。
「ああもう御託は良いから風呂貸せ、寒くて敵わん」
「横暴ですね、隊長」
「うっさい、非番まで肩書きで呼ばれたらなんや気疲れする」
「何か食べていきますか」
うう、とも、ああ、ともつかない呻きで適当に返すという事は、肯定と見なして良いのでしょうか。―――・・・・・あれ、もしかして最初から、
「泊まっていく?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ああ、もうこれは、完璧な、照れ隠しだ。




次の日 (嶋本と高嶺)

なんや、朝からえらいしんどい。どないしたんやろ、風邪か?まさか、あれだけ救命士にやんややんやと言われてて、うがいも手洗いも抜かりはなかったんにあれか、昨日あのおっさんに最後まで付きあった祟りか?あの人もまぁ、子供さんいてるのに、なんやきっとうまいこと言って子供にだけは判らんように立ち回って、ほんまずるい人やな奥さんも大変
「何さっきから訳の判らないことで誤魔化そうとしてるんですか」
あー、怖い怖い、北海道の方言やあらへんぞ、そんなもんは知らん、純粋な恐怖や、あー、やっぱり怒らせたらあかん人間てのは普段は優しいねん、そんで懐深そうに見せかけて実は物凄い器ちっさかったりするねんな、そんで、
「だから、ほら、素直に寝てて下さい」
はい、すんません。




寒い日 (嶋本と高嶺)

「寒い」
「寒いですね」
「ほんまに今は春か?ありえんぞ」
「暦の上では、ですから」
「そんなん知らんわ、もう桜も咲いとるぞ」
「そうだね・・・・・って、どうしたの」
「あかん、お前冷え性か」
「違うけど・・・・嶋は人の手で暖をとるの?」
「神林や」
「最初が誰でも、今は嶋でしょう」
「うっさいわ」
「ちょっと、手首の方まで入ってこないで下さい、冷たい」
「冷たいんはどっちや、あたためましょうかくらい気の利いたこと言うてみ」
「あたためて欲しいの」
「――――――――カイロ持ってへんか、高嶺」
「ありませんね、生憎」
「使えん救命士やな」
「すいません」
「くっそ、覚えとけよ」
「理不尽ですね」




誰か見ている (大口と小鉄)

「今の、どう思います」
「どうって言われてもな」
「嶋本さんてお母さんには甘いですよねー」
「・・・・・・・」
「ああ、でも逆かな、お母さんが嶋本さんに甘、どうしました小鉄さん」
「その、お母さんって呼び方は」
「え、結構皆呼んでますよ」
「いや、その、」
「ああ、寒いですねぇ、小鉄さん」
「・・・・・・・・・・・・・」
「今日は鍋がいいですね、寒いし」
「・・・・それは、」
「そうだ小鉄さん」
「人の話を、」
「手、つなぎますか」



最後の一つはジロテツ風味ですが、切り離すにはつながりすぎていたので、一緒に。
高嶺さんのためぐちというのが書きたかったのです。

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