夏の花 (高嶺)
ふと道端に咲いたその花を見て、あの小さな背中を思い浮かべた。
(ああ、)
地面にしっかりと根を張って、真っ直ぐに伸びて、太陽に顔を向けて、
(似ている)
精一杯背筋を伸ばして、真正面から物事に向かっていって、ずっと太陽を追いかけている。
(―――ああ、)
それほど背丈も高くない花が、これほど大きな存在に見える理由は恐らく彼と同じで、太陽が自分の後ろにでもこない限りこちらを振り向くことはないのも、そっくり似ている。
(なんとなく、)
上を向いて青空に太陽を探す。そして太陽に嫉妬する。
夏の花 (嶋本)
ふと道端に咲いたその花を見て、あの救命士を連想する。
(って、なんでやねん)
至極自然にそこに立って、まるで普通に隣にあって、多分、同じ方を向いている。
(まぁ、似てるっちゃぁ、似てるな)
同じ方向を向いていることに関して確信がもてないのは、本当はどこを向いているのか、その視線の先を見るのがどうしようもなく怖いから避けているだけなのだけれど、
(―――なんや、あれやな、)
例えばその先がもしも、自分の手の届かない例えばあの太陽のような存在だとしたなら、
(多分、これは、)
上を向いて太陽を探す。視界を真横に飛行機が飛んでいく。
心の底から湧き出た舌打ちが、暑さのためかはわからない。
夏の花 (嶋本と高嶺)
「おはようございます」
いつも通りの挨拶と、それから二言、三言、いつものように会話。
「そういえば、今朝、」
道端に咲いていた花の話。
太陽の代名詞のような、夏の花。
そういえば咲いていたと、それに続けて溜め息をつく。
「ああ、もう、夏やな。毎日暑くてかなわん」
「ええ、本当に」
決して、口には出すものか。
彼もあの花の咲くさまを見たというのなら、なおさらのこと、いえるわけがない。
(あなたのようでした、なんて)
夏の花 (嶋本と高嶺)
おはようございます、といつもの挨拶に返して、それから二言三言。
「そういえば、今朝、」
そうして突然、道端に咲いていた花の話。
太陽に顔向ける、夏の代名詞のような花。
そういえば咲いていたと、それに地続きで溜め息をつく。
「ああ、もう、夏やな。毎日暑くてかなわん」
「ええ、本当に」
そう同意する横顔を見て、やはりいわずにおこうと決意する。
(おまえみたいやった、なんて)
本当は小話五つだったのですが、残り一つが武山君だったので四つに。笑
お互いに少しだけ疑心暗鬼で臆病なころ。
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