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いつぞやの夜長の夢につらつらと (嶋本と高嶺)

自分の意志が働いた上での目覚めならば大歓迎だが、無意識による理不尽な目覚めというのにはどうやったって納得がいかないが、ともあれ落ちたようである。
「・・・・・・った・・・」
「だから、ソファで寝るのなんてやめたほうが良いって」
「うっさい」
つまり、一部始終をみられたのだろうか。覚えはないが夢は見ていなかったように思うから、無様な寝相は晒していないと思うのだが。
「つーか、お前、起きてたんか」
「ええ、ついさっき」
どこまでもタイミングの悪い、こちらにばかり都合の悪い、救命士である。
「こんな隅っこのソファで、よく寝られますね」
その上に、嫌味ときた。寝起きがよろしい自覚はあるが、あくまで時と場合と状況と気分によるのだ。もう一度眠る気も失せてしまって、そもそも眠気など落ちた衝撃でどこかへ飛んでしまっている。
「なんや、神林はまだ起きとんのか」
「みたいですね」
「計画書か・・・・・?締め切り、明日やし」
それにしたって、夜を徹してまでかかるようなものだろうか。
「まぁ、人には得て不得手がありますから」
「あいつは不得手が多すぎる。かなわんわ」
眠くはないが、思考がどうにもはっきりしない。
寒くはないが、寝床のぬくもりが酷く恋しい。
「あかん、寝る」
「また、落ちますよ」
布団で寝たらどうです、と気軽にいうが、そういわれてからだと、なにやら言い訳めいてしまう。ソファから落ちないために、布団で寝るわけではないのだ。
「落ちんわ、つーか布団の丈、足りんよりましや」
「隊長なら大丈夫ですよ」
「うっさい、嫌味か、悲しいこといわすなや、お前んことやろ」
まったくどうにも、扱いの難しい救命士である。
「お前は起きるんか」
「そうですね、どうしましょうか」
「どうしましょうか、ていわれてもな」
そんなもの、好きにすれば良いのに、誰にともなく問い掛けるのは止めて欲しい。
「で、結局ソファで寝るんですか」
もう一度くるまったところで、まるで学習効果がないといわんばかりの、呆れた声。
「お前は何がしたいねん」
「いえ、特に何も」
「せやったら俺の安息を邪魔すんな」
そうして、背後に動く気配。結局、お前ももっかい寝るんか!




眠るその人、背中を丸めて (高嶺)

ふ、と、こんなに小さな人だったかと思う。
確かに、体の大きさで物をいってしまえば小さな人なのだろう。
ソファの上で微動だにせずに、器用に眠っているその背中を見て、改めて、思う。
こんなに、小さな人だっただろうか。
声も態度も大きいし、だけれどそれには理由があるし、そうでなければならない立場に立っているのだから、しかたがないのも判る。長い付き合いのせいだろうか、この人をそれほど小さい人だと思ったことがない。一隊の隊長と並んだって、こんなに小さくは見えなかった。
そうして、ようやっと気が付く。
ああ、この人は、
「・・・・・・った・・・」
・・・・・だから、そんなところで寝ないほうが良いといったのに。
「うっさい」
自分が無様に落ちたことを、見られていたと察したのだろう。
まだ、疲れはとれていなさそうだ。まぁ、あんな窮屈なところで眠ればそうだろう。それにしても、随分と、こちらの言い分を好きなように嫌味として受け取ってくれる。だけれどその裏に、後ろめたさや劣等感は、ない。純粋に、ただ純粋にこの人は、呆れるほどに頑固に、そこに立っているだけなのだ。
そこがどこかは判らないけれど、遠近の錯覚も手伝って、だからこの人はそれほど小さな人ではない。体躯の大きさと存在の大きさは、必ずしも等号で結ばれない。
不器用な人だな、と思う。
懲りずにソファの上で毛布にくるまったその背中をもう一度見て、そう思う。
この人がもう少し器用に生きていけるなら、少しは自分の苦労も減るだろうかと考えたが、きっと彼はこのままずっと不器用なので、諦めることで安心した。




眠るそいつの呼吸を聞いて (嶋本)

はた、と思い当たる。
そういえば、こいつはこんなに笑うことの少ない奴だっただろうかと。
ガタイのわりに口数も態度も控えめで、いつもどこを見ているんだか、そもそも開いているのか閉じているのか判断のしにくい目をして、それは睫毛のせいなのだとは判っているのだけれど、一体何を見て何を考えているのが検討がつかない。
改めて思い起こしてみても、なんだか無表情のようで、確かになにかの感情の上には成り立っているのだけれど、その感情の名前が判らない、そんな表情で物事の成り行きを一歩引いたところから見つめているような、まるで全てが他人事とでもいうような、でも、そうではなく、優しさだの甘さだの、そんなのろのろと気持ちの悪い速度で進む言葉ではなくて、それでも確かに、いつも微笑んでいるような雰囲気、けっしてそうではないのにもかかわらず、そんなような、名前の付けようのない、表情。
考えれば考えるほどわけが判らなくなって、眠れない夜にはピッタリだと思ったが、少なくともその優しさのような振る舞いの裏側に、エゴがないのは知っているので、ひとまずそろそろ眠ろうと、頭の中で目を閉じた。



仮眠中の二人にまつわる小話三つ。
寝相のよろしくなさを自覚しながらソファで寝たい嶋本さんとか。

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