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まんまるおつきさま (嶋本と高嶺と真田)

空気が少し冷えてきて、朝晩に開け放すには少しだけ窓に手を添えて考えるような、そんな季節のある日に、珍しくもない顔触れの夕食の席でとても珍しいものを見た。
かたん、と皿に盛られて何気なくおかず達の列に並んだそいつは真っ白な少しざらついた殻で蛍光灯を反射する。
「・・・・・・・・・卵?」
「え?ああ、うん、きちんと半熟だよ」
「・・・・・・・・・・・・なんでやねん」
ぺし、と力なく空気を叩いた突っ込みはそのまま停滞気味の空気を作る。
「・・・・・・ああ、そうか」
すると今までそのやりとりを眺めていたその人が何かに納得して笑うから、あんたは何を受信したんですかと問えば、さらりと答えは落とされる。
「今日は月見だ」
「・・・・・・・・・・・・はい?」
「そうだろう?高嶺」
「ええ」
「・・・・・・・・・・・・なんでやねん」
もう一度、力ない突っ込みを入れてその真意を聞けば、考えられたようで行き当たりばったりの答えが返った。
「そう言えばお月見だな、と気付いたは良いんだけれど用意する時間がなくて」
「まぁ、丸いっちゃ丸いが・・・・・・」
そんなに適当で良いのだろうかと悩むより先に、最初に真意に気付いたその人が皿を持って立ち上がる。どうせなら外に出ないか、と緩く笑ったその人はそのまま窓を開けて狭苦しいベランダへ裸足で降りた。
それを見てから隣の発案者と顔を見合わせ、そいつは仕方がないですねといつものように笑って、俺はと言えば裸足でコンクリートに触れるその冷たさを思って少しげんなりしながら続く。
いくら自分が小柄だとはいえ、そもそもが狭いベランダ故にもう互いの肩は触れ合うどころか重なり合って、それでようやく収まった。
狭い、と当たり前の感想を抱いて、足の裏が冷たい、と小さく文句をこぼして、それから剥かれたゆで卵に先ほどより滑らかに反射する光を追って上を見て、隣の二人と同じようにぼんやりと、その月光に目が眩む。
そうして、ようやくわかった。
「・・・・・・・・・ああ、黄身な」
「え?」
「月見バーガーも卵やし、ええんとちゃうの」
「あ、そう言うこと?」
「ちゃうんかい」
本日三度目のまるで力のない突っ込みがぺし、とそいつの腕を叩いて、それを最後に全員一緒に阿呆のように空を見ていた。
「月が、綺麗だ」
「そうですね」
「シャレになるかならんかギリギリなんで、やめて下さい」
ぎゅうぎゅうの、狭いベランダに男三人で、愛していますもないだろう。



お月見団子がなくて、白くて丸っこいものだったらいいかな、と思ってしまうちょっとずれた高嶺さんが書きたかったんです。

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