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境界線のその人 (嶋本と高嶺)

他人に指摘されて気がつくのはやはり無自覚なのだろう。
言われてはじめてそういえば最近ため息が多いと自覚する。
「あー、言われれば最近なんや年かなー思うこと多いなぁ」
「そう思い始めたら、もう老化は始まっているらしいですよ」
うわそれやばいやん、なんて笑ってみたけれど、それじゃぁついこの間とは言いがたいけれど確かに近頃まで感じていたはずの自分の「成長」が「老い」に変わる瞬間は、その境界はいつなんだろうと思い始めてもう一つ息を溜めた自分に気づく。




幸せな人 (神林)

ため息をつくと幸せが逃げるよなんて優しい笑顔で言われたそれにちょっとした恐怖を感じてしまって必死に呼吸に気をつけていたけれど、走って乱れたこの呼吸を整えるために吐く息や、かじかんだこの指先を温めるために吐く息は数えられないようにと願いながら帰路を急ぐ。
自分を待つあの人がため息に幸福を逃がしませんように。




冷たい呼吸 (嶋本)

瞬間、つかれたため息に、思わず体がこわばる。
罵倒されるより殴られるよりひどい言葉を受けるより何より自分はため息をつかれたくだけはなかったのだとようやく認める。
ため息は暴力だ。




真綿 (高嶺)

やさしい言葉の裏でひっそりとそれに気疲れして溜めた息を吐き出しているなんて誰にも言えるわけがなくて、仕方がないからただ一人隣にいる彼への甘えのつもりで気兼ねなくため息をついているのだけれどやはり本人は気にかけていたようで、ため息は他人に伝染するからやめろと言われてからこちら気をつけている自分に少し笑う。




誰にともなく

不幸だからため息をつくのか、ため息をついたから不幸になったのか、その悪循環のパラドックスを楽しむうちに泣きたくなってやめた。



ため息にまつわる小話五つ。
あたたかい話を心がけて題材の選択をミスした記念すべきぬるさ。

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