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珍しいこともあるものです (嶋本と高嶺と神林と)

とりたてて珍しくもない顔ぶれ。自分の隊の潜水担当と、隊長と、救命士。
救命士はいつものように穏やかに微笑み、隊長となにやら会話している。隊長も、いつものように、わかりやすいフリをして、その実よくわからない表情で、救命士と会話をしている。
唯一の異常ともいえるのが、二人の間で机に向かい書類仕事をしている潜水担当の、その耳まで達した顔の赤味と、困ったような、泣きそうな表情。
(ああ、もしかして)
何となく会話の内容に察しがついた。




日がな一日 (星野と石井)

「・・・・ねぇ、ちょっと、メグル」
「・・・・・・・・・・」
「いいかげん邪魔なんだけど」
「・・・・・そがんこと、知らんたい」
「あのねぇ・・・・・・・・」
溜め息をついて天井を見上げる。思えば、朝からほとんど動いていない。
原因は判りきっている。いつでも自分の思うときにやってきては、こうしてなにもしないで一日を終えてしまうことのよくある、この不思議な前髪をした九州人に他ならない。
さて、これをどう引き剥がしたものか。
どうせこの機嫌だ、きっとなにかあったのだろうことは容易に想像はつくし、大体の内容は最近の愚痴やら愚痴やら愚痴やらの内容とそうかわりばえはしないのだろう。どうしたものかなぁ、と助けを求めるように上を向いても、そこには誰も待っていてくれない。
しかたないなぁ、あと三十分だよ、とあきらめを告げれば、抱きつく腕に力がこもった。




過ぎたるは及ばざるが (嶋本と高嶺)

この状況は一体なんだろう。
視界いっぱいに広がる、理解しがたいそれの名前を、片端から挙げていく。
(ケーキ、ケーキ、ケーキ、高嶺、茶、ケーキ、ケーキ、ケーキ、手前来て皿と箸、なんで箸やねん)
「・・・・・あんな、これは、どないな状況や」
「昨日、五十嵐機長に貰ったんです」
「ほお」
聞けば、神出鬼没なあの機長は、昨日も突然基地に現れ、本日非番であるこの救命士に箱いっぱいのケーキを渡して、去っていったというのだ。
「あの人らしいといえばらしいが・・・・・・・なんでやねん」
「私にいわれましても・・・・・」
「で、手伝え、と」
「ええ、他の人にもある程度お裾分けはしたんですけれど」
確かに自分の隊に、自分も例外なく甘党そうな輩はいない。
案外レンジャー担当あたりは好きそうだが、それでも限度というものは存在する。
「ま、しゃあないな、生物やし、食べきらんうちに腐らせたらもったいない」
明日胃がもたれないように祈る意味で、両手を合わせた。
「いただきます」




そのこころは (五十嵐と富岡)

いつも荷物は少なめに出勤してくるその人は、今日に限って大荷物を抱えていた。
「おはようございます、機長」
「おはようございます」
この場にいる全員の視線は彼女の持つ大きな箱に注がれているが、気づいているのかいないのか、彼女はそれについて自ら説明しようとする素振りは見せない。
なんとなく今までの慣習に則って、その疑問を投げかけるのは自分の役目なのだろうな、と思う。
「機長、どうしたんですか、その箱」
「富岡、今日は何月何日かしら」
「ええと、五月の十三日ですが」
「それは何の日なの」
ああ、なるほど、と思う。
「早めに冷蔵庫へ入れたほうがいいと思いますよ」
「わかっている」
それでもけっして、量についてのことはいわない。
わかっていながら伝わりにくい彼女の真意を伝えない自分は、少しひねくれているだろうか。




あらためまして (嶋本と高嶺)

「お前もやっと、副隊長か」
「ええ、おかげ様で」
にこりと笑うその顔を、なんとなく見ていられない。
「これからなんて呼んだらええのか、判らんな」
「今までどおりで構いませんよ」
それは、そうなのだけれども、なんといったら良いのだろう、虫唾が走るような感情に裏打ちされた妙な不快感が、どうにもわだかまっていてしかたがない。くすぐったいような、あたたかい不快感。
「ああ、そうですね」
それを察したのか、救命士は持ち前の穏やかさで意地悪く笑う。
「お母さん、とでも」
「・・・・・はっ、よくいうわこの詐欺師」



下の三つは母の日とお母さんネタなのでまとめてみました。
珍しく品のない会話の二人と、星野君とめぐるのぐだぐだな一日。

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