勤しむべきは (五十嵐と富岡)
「着陸は、コントロールされた墜落よ」
初対面だったか、それにほとんど近いような時期だったとは思う。
「我々の仕事は、墜落をコントロールする事にあるの」
その言葉を放った昔の軍人は、確か飛行機についていったのだったと思った。
「聞いているの、富岡」
「はい」
間の悪い (五十嵐と高嶺)
「珍しいですね、どうしたんですか」
「どうもしないわ。糖分を摂取しに来たの」
十分どうにかしてるじゃないか、といいたそうな顔で、でもこの救命士は優しいので、体中ありとあらゆる所に潜ませた糖分を分けてくれるだろう。よくもまぁ、と思うだけ彼は糖分を保持している。
「まるで魔法使いね」
「・・・・真田隊長も同じ事をいいましたよ」
「そう」
少し逆立った自分の心情の変化を察したのか、救命士は困ったように優しく笑う。
「ダッツはありませんよ、機長」
「そう、案外しけてるのね」
「すみません」
全然、悪いと思っていない笑み。それもそのはず、悪いのは自分なのだから、彼に非はない。
こういう時は、何もかも察したのだろう救命士に素直に謝るのが一番いい。
「チロルのきなこもちはあるのかしら?」
「ああ、それでしたら」
「いただきましょう」
気分屋 (五十嵐と嶋本)
「今日は嶋のおごりね」
「はい?いきなり何をいうてるんですか」
「飲みに行こう、と誘っているのだけれど」
「それ自体はありがたいんですが、その前の不穏な台詞は聞き捨てなりませんよ」
「小さい男ね」
「すいません、見た目どおりで」
「本当だわ」
「あの、他には誰かおるんですか」
「好きに誘えばいいわ、高嶺救命士でも黒岩隊長でも」
「その人選は何を基準にいうてはるんですか」
「いっていいのかしら、前者は嶋の―――――」
「わーわーわー、すいませんなんも聞かなかったことにして下さい」
「今日は嶋の」
「はい、判りました判りましたからもうちょっと待っとって下さい」
少し離れた場所から (五十嵐と高嶺)
「なるほどね」
いつの間に現れたのか、声のした方へ振り返れば、そこには五十嵐機長が立っている。
時折ふらりとあらわれては、意味深な発言や意味のない言動を振りまいて帰っていく彼女が、さて今度はなにを確信したというのだろう。
「よく判るわ、高嶺救命士」
一人納得したように頷いて、
「いいえ、お母さん」
「・・・・・・・・はい」
悪くはないわね、と満足そうに帰っていった。
五十嵐機長に振り回される周りの小話。
ヘリクルーの中で一番男らしいのは機長だと思います。笑
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