やさしいきもち (神林と高嶺)
ふっと、気になったので、としか理由としてはいいようがないのだけれど。
「高嶺さんって、どうしてトッキュー目指したんですか?」
自分は単純な思いだったけれど、なんとなくこの前の氷下訓練で、そんな単純な気持ちの人ばかりじゃないのかと思ってしまったので。
「うーん・・・・結果が目に見えるから、かな」
「へ?」
「掃除は嫌いだけど、食器の片付けが好きなのと同じだよ、大体ね」
結果が、目に、見えるから、
「でも、それは」
必ずしもいい結果ばかりじゃ、ないんですよね、なんていえるわけがなかったのだけれど。
かなしいきもち (嶋本と高嶺)
なんだか悔しかったので、笑ってやった。
精一杯笑ってやったら、意外なほど真剣な表情で、怒られた。
「やめてください」
「何がや」
「そんな風に、さよならみたいに笑うのは」
驚くほど感傷的なその言葉に、心底呆れて、笑ってやった。
しずかなきもち (大口)
殺伐、というほど乾いてもいないけれど、感傷、というほど湿ってもいない。
でも多分きっと、先のことより今の別れの方が、少しだけ寂しさが大きいから、こんな気持ちになっている、の、かなぁ、とか、考えたりして、結局自分は、扉の向こうを知るよしもなかったなぁ、とか、そもそもその扉はこちらに向かって開いてなかったよなぁ、とか、考えたりしてみた。案外、答えは出ないものだ、なぁ、とか、ね。
いつか北海道で花見しましょう、暇があったら。
とか、ね。
やわらかいきもち (星野と石井)
雨凄いね、とか、なんかそんなことをぐちぐち話してた気がする。
そこから立ち上がって、振り返って、ああ、もうそこから動けないのか、と改めて思ったものだけれど、本当はそれ以前に立ち上がって隣に座ってくれたのは、相手の、ほうで。
何で、そんな風に、と思ったけれど、その疑問への答えはあまりにも、
「んー・・・、愛、かな」
冗談じゃ、なか、とかいった気がする。あんまり、混乱したから。
「ああ、メグルは判んないか、舞城王太郎」
聞いたこともない作家の名前を挙げて、それを引用してみせたのだと、笑った。
結局、判らずじまいのその感情への名称はどうでもよくなって、曖昧であたたかでやわらかいものに包まれる幸せを噛みしめたりした。
きもちにまつわる小話四つ。
星野君はきっと舞城王太郎読んでるな、と思ったもので。
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