上下左右 (嶺真)
隣で若い隊員四人がたい焼きを食べるなら頭からかしっぽからかといやに真面目に議論しているから、この人はどうだろうとふと正面を見れば、なんの躊躇いもなく真ん中から二つに割って食べ始めるものだからなんだか笑いがこみ上げてきて、素直に笑うことにした。
得手不得手 (嶺真)
うっかり書類で指を切ったというから、絆創膏を取りだす流れでそのまま巻こうとしたら、絆創膏を指に巻くのはうまいんだと少し自慢げに言ってそのとおり綺麗にくるりと巻いてみせる。指を広げてどことなく得意げに口角を上げたそれがどうしようもなく愛しくて、気をつけて下さいねとたしなめるしかなかった。
寡占独占 (嶺真)
いつも何かと騒がしいのが一気に四人もいないとさすがに静かですねといえば、そうだなと少し寂しげに遠くを見ながら返事がくるから、寂しいですかお父さん、と冗談めかして素直に訊けば、少し考えて、そうかも知れないが母親を独り占めできているようで少し気分がいいと言って笑った。
休日曜日 (嶺真)
たまには休みにどこかへ出かけようと思い立って計画もしていたのに、いざ休みになってみるといつものように日用品を買い足して掃除をして洗濯をして、気がつけばどこへ出かけるにも中途半端な時間になって、またいつものように休みを過ごしてしまったと笑いあうのが一番幸せだと思う。
むすんでひらいて (嶺真)
お昼がまだでしたら少々作りすぎたので食べに来ませんか、と主語をぼかした救命士の誘いに乗ってやってきてみれば、そこには一面のおにぎりが広がっていて、端と端とで上達の過程がよくわかったから、期待に満ちた目でこちらを見ている隊長の手作りというのは簡単に察せたが、これはあれか、遠まわしに惚気られてるのかと救命士に訊けば相変わらずはぐらかすから、そのはぐらかし方がいつもよりも曖昧で優しかったから、ああもうこれは完全に二人の世界に上がりこんでいるのだと姿勢を正して両手を合わせた。
千さんから嶺真でリクエストを頂いたので、大変楽しく綴らせていただきました。
ありがとうございます!
高嶺さんと真田さんを綴るにあたって嶋本さんは必要不可欠だったので、最後に少しだけ。
いつになく中心となる二人に愛を注いだ小話五つです。
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